固定資産税の評価額は、当該固定資産の賦課期日における価格で、固定資産課税台帳に登録されたものであり、価格とは「適正な時価」をいうものとされている（地方税法 （以下「法」という ）第341条第 2号）。この「適正な時価」とは、正常な条件の下において成立する取引価格（正常価格）である と解されています。
そして、この評価額の算定に当たっては、全国的な固定資産評価の適正化と均衡化を確保するため、総務大臣が「固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続（固定資産評価基準）」を定め、市町村長は、これに従って固定資産の価格を決定するものとされています（法第388条．第403条）。
また、毎年度その「適正な時価」を評価し、それに基づき課税するのが本来でありますが、課税事務の簡素化等の観点から、土地及び家屋については、3年に1回の頻度で評価替えを行い（この評価替え年度を「基準年度」という）、その後の2年間は据え置くものとされています（法第341条第 6～8号）。
「適正な時価」とは客観的な交換価値であるとされています。 土地については地価公示価格が 「適正な時価」の指標とされていますが、 家屋については客観的な指標は存在せず、再建築価格方式による評価方法のみが示されています。
固定資産評価基準を基に評価をしているとは言えども、必ずしも建築の専門家でない評価員が、建物の完成後に書類ベースに算定するため、実際の施工方法や部材等の評価について誤りに陥る危険性があります。
固定資産評価における耐用年数は、法人税における耐用年数よりも長期であるため、家屋の評価が減少する速度が緩やかであり、固定資産税評価額の方が法人税における減価償却後の価額よりも高くなる傾向があります。 そのため、一度高水準の評価を受けると、長期に渡って過大な税負担を余儀なくされることに加え、基準年度まで最長3年間、前回評価年度の価額に据え置かれる仕組みのため、長年、評価額が下がらない事例も見られ、経年減点補正の意義が乏しいことが指摘されております。 また、法人税における減価償却率は、 残価を1円まで落として計算することも可能であるが、固定資産評価における残価率は20％とされており、建築後相当長期間経過していても20％以下には下がらないことも、評価額の下がらない一因であります。
従って、バブル期の様に建築費の高騰期に評価された家屋の評価額は、その後の市場価格の著しい下落にもかかわらず、納税者の負担感は依然として重いままに成らざるを得ません。
所有者には、固定資産評価額と税額のみが通知され、財産権の重要な内容を構成する詳細な算定根拠は開示されておらず、誤りを発見する機会がほとんどありません。さらに、各市町村は「再建築費評点数計算書」を内部的な文書管理規定により、一方的に廃棄処分しているケースもあります。
「賦課税」である固定資産税・都市計画税と「申告税」である償却資産の固定資産税が混雑しており、二重課税の可能性が存在するなど極めて不透明・不公平な制度となっております。
所有者には、固定資産税に関する疑義を正すための制度的な担保が不十分であり、自己の重要な情報の開示請求や是正申入れの機会がかなり限定されております。
